2013.05.14

悪い手本

図1

 

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8

授業中、奇声を発しウロウロする次郎。周りには子どもながらに白い目で大勢の子ども達。この子は間違いなく発達障害児である。広汎性発達障害(-自閉症スペクトラム)の子どもである。

 

担任の保育士は次朗に手を焼いていてうんざりしている。「何で私のクラスにこんな扱いにくい子どもを入れるの!」と園長に対して不満を持っている。そんな気持ちで毎日の保育をしているので、口喧しい母親にように「何度言ったらわかるの!」と怒鳴り散らす。。でも当人は“あさっての方向”“われ関せず”の状態だ。「いい加減にしなさい!」「悪い子ね!」「皆に迷惑がかかっていることわからないの!」何度も先生の口を突いて出で来る言葉。こんな環境にいるので他の健常児達はこの保育士と同じような目で次郎のことを見るようになってしまった。子ども達も次郎の言動に対し指を差し「次郎君は悪い子だね」「いけないことばかりするね」と言っている。

 

 

これは最悪の対応である。幼稚園のパンフレットには「優しい心、思いやりの心、みんな仲良し」と歯の浮くような美辞麗句が、まるで錆びた看板のように悲しく書いてある。

 

 

じゃあ、この担任は黙っていればいいのだろうか。残念ながら先生が次郎のことを無視していても子ども達の目には異質なものとして写っている。人は異質なものを排除したい、皆と同じようにしていたいという気持ちが生まれつきあるようだ。

 

ではどう対応すればよいのか。横浜に発達障害児に対して最高の対応をしている幼稚園がある。先生は絶対に否定的な言葉は使わない。他の子の水筒から勝手にお茶を飲む、弁当に箸を付ける、そんなことをした時に「何で他の子の水筒から飲むの!」「お友達のお弁当から食べては駄目でしょ!」と絶対に言わない。何度も何度も根気よく「次郎君は“鈴木次郎”と名前が書いてあるこの水筒から飲もうね」「次郎君のお弁当箱に入っているものだけ食べていいんだよ」と丁寧に教える。そうすると不思議な現象が起こってくる。子ども達は自分の水筒や弁当箱からお茶やおかずを取られても、ギーギー泣いたり怒ったりしない。先生と同じように「自分の水筒から飲むんだよ」と教えている。先生の後ろ姿を見て自然に学んでいるのだ。

 

 

今から10年も前の話。自閉症の息子は水泳教室に通っていた。その頃はアトピーの状態も悪く、膝や腕など赤く醜く皮膚がただれていた。息子は相手の言わんとしていることを理解出来ないのでコーチの指示がなかなか耳に入らなかった。又、多動のため1年通っても2年通ってもずっと一番下のクラスで水遊び状態。もちろん泳ぎを覚えることは出来ず、同じ頃、入会した子ども達はバタ足、平泳ぎ、クロールとどんどん上達して上のクラスに上がっていくのに対して、ちびちゃんクラスで水とただ戯れている状態だった。私はそれはそれで仕方がないことと受け入れていた。

 

 

ある時、更衣室で5歳くらいの男児が私にこう言ってきた。「○○君(息子の名前)悪い子だからいつまでも上のクラスに上がれないんでしょ。先生の言うこと聞かない悪い子だから肌が汚い病気になっちゃったんでしょ」と言った。私はその子の海水パンツをずり下ろし尻を叩いてやろうかと思ったが、モナリザの微笑みで「誰がそう言ったの?」と優しく聞いた。怖い顔で言ったら正直に答えないと思ったからだ。すると「ママがそう言ってた」と返ってきた。こういう親が平気で「お友達と仲良くしないと駄目よ」「思いやりのある子に育ってほしい」とシャーシャーと言う。“ちゃんちゃらおかしい”とはこういうことを差すのだと思う。私は今のように心臓に剛毛ではなく、産毛程度しか生えていなかったので、段々とそういうママ達と表面的に笑顔を作り、付き合うことがしんどくなり退会してしまった。

だから子どもには抽象論ではなく、親や先生の後ろ姿を実際の行動、言葉を通してしっかりと教育してく必要があると思う。荷物を抱えているからとドアを足で開ければ子どもは真似をする。「ドアを何で足で閉めるの!」と叱る前に自分の行動を振り返ってみようではあ~りませんか!

 

 

“子どもは親や先生の思う通りなんか絶対に育たない、親がしているように育つ”これ名言だと思う。

 

*写真は集団行動できずに後ろで本を読む息子

カテゴリー:正直なつぶやき

  1. Sayaka Ozaki より:

     立石先生、はじめてコメントさせていただきます。
    えんぴつらんどでお世話になりはじめてから、早2か月がたとうとしております
    私は今まで、いわゆる教育本というものを、手にしたことがありませんでした。読んだことによって、自分の子育てに不安がのしかかってくることはわかっていましたし、読んだからと言ってそれを実践できる自信もありませんでしたので。

     初めて先生の本を手にしたとき、目からうろことはこのことだと、大変感銘いたしました。もちろん、反省はしたのですが、これでよかったんだという自信もつきました。
     一人目を授かったときは無事に生まれてほしいと、それだけの想いが、子供が育つにつれて、なんでこうなんだろうと、気付かないうちに他人と比べてみたり、もっとこうあってほしいと欲をだしてしまい、それが誰のためって、自分の自己満足だったり・・・・と。
     
     結局、親は子供によって親にさせてもらっていくのだと、日々のてんやわんやの子育ての中で実感させられております。
      
     毎日、あれしなさい、これしなさいと機関銃のように
    上の息子には叱っている私ですが
    先日、夜遅く塾から帰ってきた息子が、洗い物をしている私のところへ、自分のお弁当箱を 洗い物ありがとうね、とシンクの中に置いたとき、とっても嬉しい気持ちになって、その日は叱らずに誉めよう!と思った自分でありました・・・

  2. admin より:

    さやか様、有難うございます。辛口でアマゾンでかなりひどいこと書かれていて少々というか、かなり落ち込んでおりましたので救われる思いです。子どもは宝ですよね。私も毎日息子には切れてしまい寝顔を見て心で謝ったりしています。これからも少々辛口ですがブログでは本音を書いていきたいと思いますので火曜日金曜日必ず更新致しますので是非ご覧くださいね、本当にありがとうございました!

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