2013.05.24

褒める材料がない子ども

 

7

入学式A

 

「褒めよう」と思ってもなに一つ褒めるところが見つからない子どもがいる。人生の初めっから可哀想な子どもである。私はそんな生徒を担当していた。ざっとこんな感じ

 

①鉛筆、筆箱、教科書 そんな道具さえ一つも持ってこない。身一つで現れる。

②授業中、隣の子に突く、唾を付けるなどちょっかいを出す

③鼻糞を机に擦り付ける

④立ち歩く

⑤「先生、馬鹿!」「先生、おばさん!」「うんこ!」「死ね、くそ!」と暴言を吐く

⑥後半、よだれを垂らして寝ている

 

こんな調子だから親も年中無休、24時間営業で怒ってばかりいる。担任の先生も同じ。「また、○○君だあ~」という目で見て「何度、言えば分かるの!」と親と同じ調子で叱っている。だから子ども自身も心は投げやり状態。まだいたいけな5歳なのにいつも優秀な子どもと比較され永遠に縮まらないマラソンレースをさせられているような状態である。「どうせ俺なんか」と幼児なのに既に人生投げやりになっている。自己否定がもう既に始まっている・・・

 

 

そんな子どもが私の教室に入会してきた。親もずうずうしくて「文字の読み書きなんて出来るようにならなくてもいい。少しでも躾してもらえれば・・・椅子に座れるようになってさえくれれば」なんて私に躾してもらおうと思っている。躾に月5000円の授業料を払おうというのだ。そして、僅かな時間でも子どもと離れてショッピングに行きストレス発散したい魂胆見え見えである。こっちも「世の中にあんたの子だけじゃあないんだよお!他の子ども達だっているんだよお!お父さんが汗水垂らして働いた給与の中から、みんな私の授業に時間とお金を投資して教育成果を期待しているんだよお!」と怒鳴りたかったが、そこは相手はお客様、プロとして「ではお預かりします。やっていいこと悪いことも含めてしっかり指導させて頂きます。ご安心ください」なんて心にもないことを言ってしまった。

 

 

「はて、どうしたものか・・・・」と私は悩んだ。保育園や学校や親と同じように機関銃のように叱っても本人にとっては目新しくないし、私も教師として芸がない。だったら人生5年、「彼が経験したことのないことをさせてやろう!」と考えた。それは“褒められる”ということ。でも何一つ褒める材料が見つからない。私は探しまわった。

 

 

そして思わず「ねえ、太郎君、昨日、お風呂入った?」と聞いた。「うん、入ったよ」と返事。「ええ、偉いね!毎日、入るんだ。立石先生なんて忙しくて眠くて、つい2日に一度くらいになっちゃうんだよね。毎日、ちゃんと入るなんて立派だねえ」と言った。すると、きょとんとした顔をして、その直後、今まで一度も見せたことのない子どもらしい笑顔を見せた。「きみって、いつも怖い顔しているけど、笑うととっても可愛いいんだねえ」と思わず口を突いて出た。それも彼にとっては褒め言葉。そして、学力や授業態度以外のことをどんどんと褒めるようにした。ざっとこんな感じ。

 

①パンツを履いていることを褒める

②教室にやって来たことを褒める

③髪型を褒める

④鼻糞をほじくっていても、耳くそや眼やにをほじくっていないことを褒める

 

 

そうすると不思議な現象が起こってきた。相変わらず親や保育園の担任に対しては荒れた態度だったが、私の前では「もっと褒めてええ」のオーラをビンビン出し、いい子でいようとするのだ。教室の窓の外にはずらっと並ぶ保育士の顔、「ほら、見て!太郎君が椅子座っているよ。それに笑って楽しそうにやっている」と話をしている。授業終了後、保育士からの質問攻め「立石先生、太郎君にどんな魔法をかけたんですか?私から答え「耳くそ、目やにをほじくっていないことを褒めたんですよ」。小学生2年生以降になると「自分は授業態度や学力では褒められず、関係ないカテゴリーで褒められている」とばれてしまうが幼児はまだ頭の中が単純だからこれで天にも昇る気持ちになる。

 

 

人間はけなされて良くなろうとなんか絶対に思わない。脳はそんな作りに出来ているからだ。期待されてその人の期待に答えようと頑張るものなのだ。“人は認められるのが好き”なんだ。

 

そして、私は太郎君の生涯印象に残る先生になった。太郎君は今、もう社会人になるが未だに「今の僕があるのは立石先生のお陰です」と年賀状に書いてくる。私は習い事の先生。たった週1回1時間、年間42回×数年間の関わりだったが彼の人生に私が与えた影響は大きいと思う。このこと自体が私自身が教師として成功したこと、認められたこと、自尊感情を満たされたこと、だから太郎君を担当したことによる私への影響は計り知れない。だからこの仕事は辞められないのだ!(尚、指導力が抜群の立石先生だから出来たこと、他の生徒さんの迷惑も考えて、あまりに授業態度がなっていないご家庭のお子さんは入会もお断りすることがございますのでご了承ください)

※写真は態度の悪い私の息子

カテゴリー:正直なつぶやき

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