2013.06.07

ちいさな背虫の女の子

「小さなせむしの少女」という話を知っているだろうか。内容はこれ。少し長いが読んでほしい。

『小さなせむしの少女』

リヒャルト・レアンダー作

昔、一人のお母さんがありました。子どもは女の子が一人っきりで、その女の子はとても小さくて青い顔をしていました。それに、よその子どもとは少し違っているところがあったのでしょう。お母さん一緒に連れて外へ出ると、よく皆が立ち止まっては後を見送って何かひそひそ話し合いました。

 

そんな時この小さな女の子が、お母さんに何故、皆はあんなにジロジロ私を見るのと尋ねました。いつもお母さんは「お前が皆がびっくりするほど綺麗な新調の服を着ているせいよ」と答えました。すると女の子もそれで納得しました.

 

けれども家に帰ってくると、お母さんは女の子を両腕に抱き締め何度も何度もキスしてう言うのでした。

 

「本当にお母さんは心配ですよ。そのうちお母さんが死にでもしたらお前はどうなるだろう。お前がどんなに可愛い天使みたいな子だかということは誰ひとり知らないんだし、お父さんでさえ知らないんだもの」

しばらくするとお母さんは突然病気になりました。そして九日目に亡くなりました。

 

お父さんは一年経つと新しいお母さんを迎えました。それは前のお母さんより綺麗で若くてお金持ちのお母さんでしたけれど、心は、とてもそんな優しい人ではありませんでした。

 

実は小さな女の子は、前のお母さんが亡くなってからというものは毎日朝から晩まで、部屋の窓敷居の上に腰をかけてずっと過ごしてきたのでした。それも一緒に連れてて出かけてくれる人が、一人もいなかったからでそのためにますます青い顔になり、この一年は、ちっとも大きくなりませんでした。

 

そこへ、新しいお母さん家に来ることになりましたので、女の子は「これで、また郊外のきれいな道を気もちのいいお日さまの光に照らされながら散歩できるようになるわ。今ごろは美しい藪が生いしげり、きれいな花が咲いていて着かざった人達が大勢出てるでしょう」と考えました。

 

そう考えるのも無理はありません。何しろ女の子の家は、めったに日の差し込まないような小さな狭い小路にあったのです。そして、窓敷居の上に座っていても青空がほんのちょっぴり、ハンケチの大きさぐらいしか見えなかったのです。

 

実際、新しいお母さんは毎日、昼前も昼からも外出しました。そして、その度ごとにびっくりするほど美しい前のお母さんが持っていた、どんな服よりもずっと美しい服を次々と着かえて出て行きました。それでも、小さな女の子を一緒に連れて行くことは一度もありませんでした。

 

そこで、女の子は、とうとう勇気を出してある日のこと、どうか一緒に連れて行って下さいと一生懸命頼んでみました。けれども新しいお母さんはそれを跳ね付けました。

 

「お前はどうも頭が少し変だよ。お前と一緒に出かけたらよその人がどう思うかね。れっきとしたせむしじゃないか、せむしの子どもというものはいつも家にいて、外へなんぞ出るものじゃないよ」

 

こう言われて、小さな女の子は声が出ませんでした。そして、新しいお母さんが外へ出かけてしまうと、早速、椅子の上にのって、自分の姿を鏡に映してみました。すると、ほんとに自分はせむしでした。ひどいせむしでした。そこで、またいつもの窓敷居の上に腰をかけて、下の通りを眺めていました。そして、毎日、自分を一緒に連れて行ってくれた優しい前のお母さんのことを思い起こしました。それから又自分の背中のこぶのことを考えてみました。

 

「いったいこの中に何が入っているのかしら。」と女の子は独り言を言いました。「こんなに大きなこぶなんだもの、何かが入っているに違いないわ」

 

夏が過ぎました。そして、冬がやってきますと、小さな女の子は、ますます顔色が青ざめて身体がすっかり弱ってしまいました。どうしても窓敷居の上に、腰をかけていることが出来なくなりましたのでいつも、べッドに横になっていなければなりませんでした。

 

やがて、マツムシソウの緑の芽が土の中から萌え染める頃になりますと、ある夜、優しい元のお母さんが女の子のところにやってきました。そして天国がどんなに素敵で素晴らしいじゃということを話してくれました。

 

そのあくる朝、小さな女の子は死んでいきました。新しいお母さんはお父さんに言いました。「泣くことはありませんわ、あなた」と新しいお母さんは言いました。「この可哀そうな子にはこうなるのが一番いいのよ。」

お父さんは一言も返事をせず黙って頷きました。

 

さて、女の子がお墓に埋められてしまいますと、大きな白鳥の翼を持った一人の天使が天から舞いおりてきて、女の子のお墓のそばに下り立ちました。そして、まるで家の戸を叩くようにお墓をコツコツ叩きますとすぐ女の子がお墓のなかから出てきました。

 

女の子は「自分を天国のお母さんところへ連れて行くためにやってきたのだ」という天使の話を聞きますと、はにかみながら「本当にせむしの子どもが天国の人になれるのでしょうか」と尋ねました。そして「私にはそんなことはとうてい考えられません。だって天国はとても美しい気高いところだといいますもの」と言いました。

 

けれども天使は「安心おし。おまえはもうせむしじゃないよ。」と言いきかせて、白い手で女の子の背中をさすりました。そうすると、例の醜いこぶが、大きなぬけがらのようにポロリと落ちました。そしてその中に何が入っていたでしょう? 二枚の、白い素敵な翼でした。

 

女の子はまるで、今までずっと飛びなれていたかのように、その翼を広げて天使と一緒にキラキラした日ざしのなかを、青い空に向かって舞いあがってゆきました。

 

天国の一ばん高い席には優しいお母さんが座ってい、両腕をこちらに差しのべていました。女の子はお母さんのふところに向かってまっしぐらに飛んで行きました。

 

どのように感じましたか?今、このような絵本が世の中にないのをとても残念に思う。

私が共感した文章は少し皆さんと違うかもしれない。ここだ。「本当にお母さんは心配ですよ。そのうちお母さんが死にでもしたら、おまえはどうなるだろう」この一文を読むと私の今の心情と全く一致していて泣きそうになる。親亡き後の子どもの行く末を案じている場面だ。

 

障害児の親は皆「神様、たった一つだけ願いを叶えて下さるのならばこの子の寿命より私の寿命を1日だけ長くして下さい」と願っている。これは本当の話。私は38歳で息子を生んだので、息子が80歳で死んで私が+38歳の118歳で死にたいと思っている。私が死ぬ日がわかっていたら、その前日に私は息子の首を絞めて殺したいと本気で思っている。一人で生きていけない子どもを心配で置いて逝けないのだ。障害児を持つ親は少なからず同じ気持ちでいると思う。

 

この作者のレアンダーの童話集は沢山あるが、その中でこの『小さなせむしの少女』は現在、絶版になっている。「せむし」という単語が背中に虫が居てこうなると名付けた差別的表現であるということが理由である。

 

「ぐりとぐら」「はじめてのおつかい」「アンパンマンの大冒険」そんな絵本が売れ筋。でもこれらの娯楽絵本以外の「せむしの少女」のような話が世の中から差別的表現というそんな理由だけで何故消え去るのか私にはさっぱりわからない。子どもたちに大切なことを学ぶチャンスを奪っていると思う。

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私が子どもの頃一番好きだった絵本。「シナの五人兄弟」

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「シナ」がという蔑称が用いられていることに加えて,イラストの描き方が弁髪などの「いかにも中国人っぽい」と批判されて差別用語だからと石井桃子さんという素晴らしい訳者が書いたこの絵本を福音館書店は廃版にしてしまった。ラーメンで“シナそば”ごく普通に使われるようになってから、勇気を奮って批判覚悟で瑞雲社という別の出版社が同じ絵で別の訳者が書いたものを1995年に新たに発行した。

 

「ちびくろサンボ」も作品の中の男の子の名前「サンボ」黒人に対する蔑称である、サンボが169枚のパンケーキを平らげる描写が「大喰らいの黒人」を馬鹿にしているのではないか、サンボの派手なファッションは黒人の美的センスを見くびっているなどの理由ですべての出版社がこの絵本の出版を自主的に取り止めてしまった。全ての書店の店頭や図書館の書架から姿を消した“ちびくろサンボ”

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その後、カルピス商標など、その他の黒人表現の自主規制にもこのことが繋がったのである。(「ちびくろサンボ」今は一部改編されて復活しているが・・・)

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せむしの少女。これを当社で作成する絵本シリーズに是非入れたいと思っている。でもも物議をかもすだろうなあ。会議でもめるだろうなあ・・・・でも勇気を奮って子どもに文学的にも絵的にも素晴らしいものを提供していきたいと強く思っている。

 

カテゴリー:正直なつぶやき

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