2013.09.20

固定観念

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今、会社で教室用教材として絵本を作っている。もう4冊目になった。最近作った『猿蟹合戦』に続き『ジャックと豆の木』は文章がやたら長い。3歳児・4歳児・5歳児も同じ絵本。ネットで購入した方も実際、手にして「結構、文章量があるなあ~」と感じた人も多いだろう。写真は0歳と2歳の子ども、ストーリーというより絵を見て楽しんでいる。絵本は楽しむもの、内容を理解させよう、文字を読ませようなんて思わなくてよい。

 

 

 

教室用の絵本を作る時の題材は昔話を選ぶようにしている。アンパンマン、ラックにかかっているダイジェスト版のアニメチックな絵本など売れ筋に押されて、『北風と太陽』『はだかの王様』『マッチ売りの少女』『安寿と厨子王丸』などを読み聞かせされていない子どもが多いからだ。家庭では創作絵本を読んでもらっているだろうから、せめて縁あって教室に通ってきてくれている7000名の生徒には幼児期に昔話に触れさせたいと思っている。書店では奥の棚に埃をかぶっている売れ筋ではない絵本を作りたかった。創作絵本ではない昔から人々の口伝えに伝えられた日本の民話や昔話、古今東西読み継がれている世界の名作だ。5作目に作成を予定しているアンデルセンの『すずの兵隊さん』など大人でも知らない人が多いだろう。まず駅前の本屋さんにはない。探し歩いて表参道のクレヨンハウスでやっと一冊見つけた。

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名作には名作の理由がある。奥がかなり深いのだ。だから勝手に文章を削除してはならない。カットしてしまうと伝わるべきものが伝わらなくなってしまう。文章をカットしないということは長くなるということ。

 

 

 

私はある某出版社の『ジャックと豆の木』を読み聞かせしたことがある。それは短い短い話だった。ざっとこんな風に書かれていた。

 

ジャックと豆の木

『ジャックと言う男の子がお母さんと貧しく暮らしていました。

ある日、ジャックはお母さんにたった一頭あった牛を町に売りに行くように言われました。途中でジャックは不思議な男に出会い大事な牛と豆を取り替えてしまいました。

家に帰るとお母さんはカンカンになって怒りました。「こんな豆粒何の役にも立たないじゃあないか」そうして豆を庭に投げました。

翌朝、起きてみると庭に大きな豆の木が生えていました。

 

ジャックはその豆の木を登って行きました。雲の上にあったのは巨人の城でした。そこには人食い鬼が住んでいましたが、ジャックは鬼の奥さんをうまく騙しました。

そして鬼が寝ている間に金の卵とハープを盗んでしまいました。そして豆の木を伝って自分の家に戻ろうとしたところ、鬼がこれに気が付いて追いかけてきました。

驚いたジャックはお母さんに斧を持ってくるように叫び、豆の木を思い切り切りました。人食い鬼はまっさかさまに落ちて死んでしまいました。

ジャックとお母さんは金の卵を産む鶏とハープのお陰でいつまでも幸せに暮らしました』

 

 

生徒にこの本を読み聞かせたところ、子どもたちから「ジャックってひどいことするね。大男が可哀想蚊~」と声が上がった。どう読んでも読み手である私でさえ「ジャックに宝物を全部取られた挙句、殺されてしまって何だかこの大男は可哀想」と思った。

 

 

 

本当の話はジャックのお父さんはその昔、雲の上の人食い鬼に食べられて亡くなってしまった。宝物は全部奪われた。ハープもジャックの父親の宝物だった。父を亡くしたジャック家は母子家庭となり貧しい生活を送る。働きづめの毎日が続いていた。ジャック家以外の村人も同じ目に遭わされていた。

 

 

エンピツらんどの絵本にはそこまで詳しくは載せられなかったが少なくともジャックが泥棒同然には感じさせないように描写がされている。850円という定価(会員には600円)なのでページ数に制限があるため、鬼が村人にした悪さを事細かには書くことは出来なかったが少なくとも「ジャック悪し!」とは感じさせない文章となっている。

 

 

 

又、ジャックは豆の木を3回に渡って登る。一回目はおっかなびっくり、2回目は好奇心が湧き、3回目は亡き父の宝物を取り返そうと言う正義感と勇気を奮って登る。だから顔つきも1回目、2回目、3回目と微妙に表情を変えている。言葉遣いも同様、そうなると文章が長くなってくる。

 

 

 

有名な楠山正雄が日本語訳した『ジャックと豆の木』にはこうも書いてある。

 

人食い鬼を倒して何日か経った後の話、いつぞや、はじめてジャックに会って豆と牛を取り替えた妖怪が“全て自分がはからってしたこと”だと言って、「あの時、豆のツルをみ見て直ぐにどこまでも登って行こうという気を起こしたのが、そもそもジャックの運の開ける初めだったんだよ。あれを、ただぼんやり、不思議だなあと思って眺めていてやり過ごしていたら、あなたたちは、今も相変わらず貧乏な暮らしを送っているだろう。だから、豆の木のツルを登ったのが、とりもなおさず、幸運のはしごをのぼったわけなのだよ。」
妖怪はこう言い残して帰って行ったというのだ。

 

 

これを読んだ時「チャンスが目の前に転がっていても気が付かない人、チャンスをことごとく拾い運を開く人」という言葉を思い出した。目の前にチャンスが転がっていても「又、今度にしよう、今、忙しいから」と手を出さない“先延ばし癖のある人”には幸運はやってこないのだ。ジャックは運を拾っていく少年だったのだ。ここまで想像させる文章を書きたかった。

 

 

 

本来、読書とはその人の人生経験により様々な感じ方をする。2歳の子どもにジャックト豆の木を読み聞かせば、金の卵を産む鶏が「ポトリ」と卵を産む場面だけを喜んで見るかもしれない。その『ポトリ』の擬音語だけが楽しみかもしれない。5歳児はジャックの身を案じてハラハラドキドキしながらストーリーを聞いている。それぞれの楽しみ方でよい。お勉強的に内容を理解させよう、声に出して読ませようなんて思わなくてよい。

 

 

 

私は古典を幼児期から素読させる意義は大ありだと思っている。意味もなにもわからなくても論語を『子曰わく、学びて時に之を習う、亦説ばしからずや』元気よく読んでいる。それでよい。子ども「ひのたまくう」と聞こえて「火の玉を食べる」なんて勘違いしていてもいいのだ」

 

 

名曲『ふるさと』の『うさぎ追いし かの山』を「兎、美味しい、蚊の山」と聞きちがえて「兎を食べると美味しくて蚊がぶんぶん飛んでくる」なんて勘違いしている子どもはかなりいる。

 

意味がわからなくても生きて行く上で大切な文章、美しい言葉、名文をインプットすることだけで意味ありなのだ。言葉には言霊があるのでこれで心は育つのだ。

 

 

 

絵本はこれらの古典とは又違うが、小さい子どもだから短い文章でよい、アニメチック絵でよいということではない。脳が一番発達する時期だからこそ、本物のストーリー、文章、絵を見せたい。赤ちゃんにもこうして読み聞かせしてもよい。

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ついでに文章が長いから文字が小さい。でも視力は大人と同じようにあるのだから文字が小さくてもよいのだ。子どもだから大きい文字というのは大人の作った固定観念!文章も漢字かな交じり文にもしている(※この目的・意義については以前のブログに書いたので今回のブログではカットする。カワカマス理論!)tateishi-mitsuko.com/blog/%e6%ad%a3%e7%9b%b4%e3%81%aa%e3%81%a4%e3%81%b6%e3%82%84%e3%81%8d/20130726010003.html)。しかも、先に漢字が目に飛び込んでくるよう縦書きは左ルビ、横書きは下ルビにして、ラスト10%の詰めをしてこだわっている。

 

 

ネットで購入して家庭で読み聞かせる時は最初から最後まで読み聞かせしてやってほしい。限られた時間のエンピツらんどの授業中では、家庭に持ち帰り一冊読んでもらっているだろうから、週を分けて2~4回くらいに分けて読み聞かせしても構わない。・・・・・

 

 

 

短い絵本でもよくない絵本がある一方、長くでも小さい子どもが強い関心を示す絵本は沢山ある。だから、小さい子だから短い絵本、意味がわからない言葉を与えてはならないなんていう固定観念に縛られないようにしよう!

 

そんな諸々のことを10月21日出版の『心と頭がすくすく育つ読み聞かせ(あさ出版) 1365円』に書いたので関心がある人は読んで欲しい。

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カテゴリー:正直なつぶやき

コメント(1)

  1. 大信田昌宏 より:

    絵本の内容って、
    意外と「これ、悪い事じゃなにの!?」と思える物語がありますよネェ!

    「桃太郎」のように鬼ヶ島に攻め入り、宝物を奪って帰るのが典型ですヨ!!

    なので子供達には〝本質〟を見極めさせる為にも絵本は必要ですネ☆

    (^へ^)/

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