2013.10.04

フィルターにかかろう就学時健診

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10月・11月は就学時健診の時期、小学校入学前に行われる健康診断である。これを恐れている人がいる。「グレー」「ちょっと怪しいかも・・・?」の子どもを持っている年長児のお母さんだ。今、裁判所で判決を受けるような気持ちでドキドキハラハラの毎日を送っている人のではないだろうか。

 

 

 

就学時健診では身体の発達や、知的発達の度合いが検査される。健常児であれば普通学級に心身に障害があり特別な支援が必要な子どもの場合、特別支援学級に行くよう言われる。知的に遅れがない場合は普通学級に入学することになるが配慮が必要なことや通級制度を利用するように告げられたりする。(※通級による指導とは、日本の義務教育における特別支援教育の制度の一つで、通常の学級に在籍していながら個別的な特別支援教育を受けることの出来る制度である)

 

 

 

特別な配慮、支援が必要な子どもとは、知的障害、ダウン症、13・18トリソミーなど染色体異常・発達遅滞・自閉症・緘黙症などの他、知的には遅れのない“学習障害・注意欠陥多動性障害・高機能自閉症・アスペルガー症候群”の4つの発達障害をもった子どもも含まれる。

 

 

 

この就学時健診、自治体には実施する義務がある一方で、保護者が子どもを受診させるかどうかは義務ではない。多分、これが自由参加であることを知らない人がほとんどだから通知が来れば出向くだろうし、その日を心臓ハバクバクで待っている人もいるんだろう。

 

 

 

私は息子を地域の小学校に入学させることを元々考えていなかったし、自由参加という知識があったので通知が来ても無視してゴミ箱に捨てていた。3月末になって学区内の校長先生から「すみません。立石さん就学時健診にいらっしゃっていないようなんですが、来週からどこの小学校に入学させるおつもりですか?」と一応電話がわざわざご丁寧に来た。「息子は発達がかなり遅れていて地元の公立小学校では充実した小学校生活が送れないと思いましたので、遠くの特別支援学校に行かせます。だから就学健診には伺いませんでした。そちらに入学させる予定はありません」と答えた。

 

 

 

同じ就学時健診の通知を無視した母親の中に私と真逆な選択をした人がいる。息子よりももっと障害が重い自閉症児だった。年長児の時点で言葉も皆無。母親はわが子の障害はわかっていた。しかし、「いつか普通児になるのではないか。普通学級に入学させて健常児と関わっていたら良い刺激を受けて伸びていくのではないか」と淡い希望を持っていた。就学時健診に子どもを連れて行けば「特別支援学校に入学してください」と言われるのが目に見えていたので区からの通知を全く無視していた。

 

 

 

私にはその考えが理解しがたく母親にしつこく質問したら「フィルターに引っかかるのを避けたい!どうしても普通学級に入学させたい!」という強い思いがそこにはあった。私から見ればそれは単なる親のプライドで子どものことなんて全く考えていない行動。私は「普通学級に行ったっていいことなんてないよ。刺激があるかもしれないけれど、苛めや自分だけができない体験を毎日することになりデメリットの方が多いと思うよ」と何度も説得したが彼女は最後まで聞く耳をもってくれなかった。

 

 

 

最終的には何だかんだ理由を付けて受診しなかった。入学式前日まで行政から何度か連絡があっても「風邪を引いた」「旅行に行く」など理由をつけて隠れていた。とうとう入学式当日を迎え子どもは親の希望通り普通学級に入学することができた。

 

 

 

しかし、大変な苦労をしている。授業内容がさっぱりわからず置いてきぼりにされている。友達も出来ない。就学時健診を受けなかった親子は入学式の日「明日から毎日、親同伴でなければ受け入れられない」と学校側から言われ、給食まで一緒に食べている。母親は自分の子どもと他の子どもの違いを毎日、目の当たりにしてストレスが溜まり、子どもにも更に辛く当るようになってしまった。

 

 

 

就学時健診は11月、遅すぎる。特に知的遅れを伴わない発達障害の場合とても見えにくい障害だ。親も生まれて5年間あまり、普通の子どもだと思って育ててきたのに、突然、障害があることを知らされ、3月までの5ヶ月の短い期間に障害を受け入れ、学校まで選ばなくてはならない事態に陥る。だから、すんなりいく筈がない。行政側と親が裁判になるケースも実際ある。

 

 

 

世田谷区ではこのため全国に先立って4歳半の検診のシステムを以前から導入しているこれも強制ではなく任意。区が全世田谷区民に通知を出し、発達障害児の早期発見に力を入れている。年中の時期に親に告知し、じっくりと子どもにあった学校を選んでもらおうという訳だ。でも実際足を運ぶ人は少ないしアドバイスに従う人も更に少なくなると区役所の人がぼやいていた。(ネットで調べてもなかなか出てこないので、ひょっとしたら受診者が少なくて今はないのかもしれない)

 

学校選びについては以前ここに私が書いた記事があるので是非、参考にしてほしい。

mamasola.net/?cat=74

 

 

 

障害があると不幸だと思っているからら就学時健診を恐れるのではないだろうか。色々と配慮が必要だったり不便なこともあるが不幸な訳ではない。子どもの将来の幸せを願っているのならば親の気持ちではなく、子どもの状態にあった学校選びをすることが一番大切。楽しい毎日、成功体験、出来たという達成感が普通学級に入学するとなかなか味わえない子どもであれば、成功体験が出来る、つまり、言い方は悪いがランクが一つ低いクラスに行くのが人格形成上とてもよい影響を与えると思っている。そしてその楽しい体験の積み重ねが幸せな将来を開く鍵になる。

 

 

 

日本には知的に遅れがない発達障害児用のクラスはない。だから普通学級に入学することになる。特別支援学級だとレベルが低すぎるからだ。でも、障害を隠して入学させるのではなく、障害をカミングアウトして担任、校長、クラスの保護者、クラスメイトに配慮が必要な子どもであることを入学前にしっかり伝えておく必要がある。それがないと子どもは誤解され配慮のない扱いを受け辛い学校生活を送ることになり、そのしっぺ返しが12歳以降の思春期で二次障害という形で表れてしまう。これだけは避けてほしいと願って止まない。

写真は1995年 私が特別支援学校で教育実習生として教えている写真、当時、32歳くらい

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カテゴリー:正直なつぶやき

  1. 大信田昌宏 より:

    親の想いがかえってその子を不幸にしてしまったという事ですネ!

    今回のお話にある親御さんはプライドもあったのでしょう。

    しかし、子供の幸せを願うのなら自分の想いを押し付けるより、その子の身になって考えるのが1番です!!

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