2014.05.13
下手という価値観
「絵が下手・・・」「絵が下手・・・」と学校から帰ってきて叫ぶ息子。べそをかいているわけではない。
単に抑揚のない感情のこもらない声で言っているだけ。
先生または友達に「お前は絵が下手だ」と言われたのだろう・・・・
つい、私は仕事で自分の生徒に無意識に声かけしてしまうような”意味のない励ましの言葉”を次のように息子に言った。
「そんなことないよ。上手だよ」と・・・・・
すると息子はパニックを起こし激怒した。
そこで、先生に共感するような言葉「そうだね、下手だね」と言ってみた。すると安心しきった顔をした。どうも、他の人から言われたのと同じように「絵が下手」と言ってほしかったらしい。
13年間、育てていても自閉症児の思考回路をまだまだ理解していない私・・・・
この出来事を自閉症仲間のママに話してみた。すると「“下手=悪いこと”という価値基準がないんじゃあないのかしら・・・・」と言われた。確かにそうだ!息子には一定の価値基準が存在しなかったんだ~!
その代表的な例として“自分の気持ちよりスケジュール優先”ということ。どんなに嫌なことでも、楽しいことがあっても予定が最優先。
嫌なことの代表例として予防注射
「痛いことされるのを予告しておくのもどうかな?」と私は思い、注射の予定日を予告しておかなかった。
注射当日、本人に何も言わずにただの診察と偽って小児科に連れて行った。いきなりインフルエンザの予防接種を“ブスッ!”とされた。痛みからではなく、予定外のことをされたことに激怒しパニックを起こし、注射後、待合室にダッシュして病院のガラス窓にぶち当たる自傷行為。ひと騒動起こした。
医師から「自閉症児の親なんだから見通しを立ててやることの重要性くらいわかっているでしょ!今度から事前に言ってから連れて来てくださいね!」とひどく叱られた。
その後、採血のための注射があったがカレンダーに遠足の日のように1ヶ月も前から予告しておいたら、痛くて泣きはするがパニックを起こすことは決してなかった。
楽しいことの代表例、友達の家でのクリスマスパーティ、人と話をすることはしないし誰と交わるという訳ではないが毎年のイベントをとても楽しみにしている。
出かける前、いつものように「今日は何時に帰るんだ?」と確認されたので「21時15分には友達の家を出るよ」と予告しておいた。スケジュールは彼にとっては最重要事項
さて、時が経つのも忘れ楽しんでいたら、予定帰宅時刻が迫ってきた。21時14分59秒まで息子は楽しんでいる。しかし、21時15分になると“お城の12時の鐘の音に焦るシンデレラ”のように何がなんでも帰ろうとする。
「あと10分遊んでいこうよ」と私が言ったら大騒ぎしてパニックを起こし、腕を噛み自傷行為。出かける前に告げておいた予定時刻を絶対に過ぎてはならなかったのだ。ひと騒動起こした後「風呂に21時45分に入り、22時13分に洗濯機のボタンを押す」と細かい時刻までいつものように指定された。
人間の価値基準なんてそれぞれ違う。
同じ給料で働くんだったら私は密度の濃い激務の方がモチベーションが俄然上がる。でも世間には同じ給料をもらっても出来るだけ楽で暇な仕事がいいと思っている人がいる。「それで人生楽しいんか!」と批判したくなるが、価値観が皆違うのだから自分と同じように感じたり考えたりしないからといって決して批判してはならない。
絵が下手と言われて喜ぶ息子を否定してはいけないのと同じだ。
一つ目の国という絵本がある。周りがみんな目が一つだったら、目が二つあるのは恥ずかしい、異質でおかしいと見られる話だ。世の中の人が殆ど独身だったら、結婚して家庭を持つことが幸せという価値基準はなかったかもしれない。人間は皆周りとの比較で価値基準を決めている。
自閉症は“社会性の障害”だから他者との比較、他人の物差しが全くない。ある意味、幸せな人生なのかもしれない。
アスペルガー症候群など軽度で限りなく白に近いグレーな人は他者と自分との感覚の違いをひしひしと感じ「どうして皆と同じように自分は友達が出来ないんだろう。トラブルばっか起こしてしまうんだろう・・・・」と悩むようだが、知的遅れがあったりするとそれもわからないのである意味幸せなのかもしれない。
5年ほど前のことになるが身体全体をピクピクと揺するチック症状が激しかった息子を小児神経科の専門医に診せたことがある。「チックは心因性の要因が高い」つまり精神的心理的ストレスだと医師から言われたので私は「この子にはストレスなんかないと思います~!」と答えた。すると医師は「自閉症の人は生きているだけ、生活しているだけで日々ストレスの連続なんですよ。目に入る光、音すべてが不快なものでストレスなんです」と言った。
勉強を強要しない、こだわりに応じる、偏食を受け入れる、自閉症をこよなく愛し深く理解し何でもやってきた私だがまだ理解不足と言われた。音を遮断するイヤーマフや耳栓、サングラスなども必要と言われた。母として未熟・・・・
「絵が下手」と言われ、その言葉を呪文のようにオウム返ししている息子の言葉を何気なく聞いて、実際の絵を見てもいないのに「そんなことないよ~」と一般人の価値基準で応対していたこと。修行が足りない証拠。まだまだなんだ。
この子を育てるのは本当に難しくかつ面白い。違う世界観を共有できるからだ。人生っておもろい!このことについてはいつも何故かとってもプラス思考の私なのでした~
カテゴリー:正直なつぶやき
私も絵がド下手です!
かといって「下手=わるいこと」と捉えるのはその人の価値観が合わないだけの話なので、そんな事を言う人は放っておくのが1番ですナ!!
そんな中でもプラスに転じる立石先生の考え、
見習いマス☆
(*^▽^)v
先生 ありがとうございます。しっかり頭に刻み込まれるまで読み返します。