2014.07.04
選ばれてしまった親
ダウン症児を持つママに健常の子どもを持つママが励ますつもりでこう言った・・・
「○○ちゃんはあなたを選んで生まれてきたのよ~」
傍で聞いていて「ううん~自己満足発言だにゃあ~」と思うあ・た・し!
果たして、言われたダウン症の子どもを持つママはこの言葉をどう捉えたか・・・
実際のダウン症児のママの声には出さない反論
「何で私を選んで生まれてきたのよ!」
「『子どもはお母さんを選んで生まれてくるんだよ!きちんと育てられる人のところに生まれてくるんだよ』といつも言われる・・・でも、そんな綺麗事を言われたくない!神様に選ばれたくなんかなかったのに!」
「“責任を持って育てなさい”と責められている感じ・・・」
実際にこの世に生まれてくるかこないかは子どもの選択ではない。「親を選んでやってくる」なんてことはない。男女の営みをして妊娠したのは親の選択。だから障害児を生んだ親は「こんな子に産んでごめんね」と自分を責めたりする。
“出生前診断”で染色体異常とわかると90%が中絶する時代・・・
でも、胎児に異常があると判明しても10%の人は中絶しない。相当な覚悟で産む決心をした親に対して「ママを選んで生まれてきたのよ~」と軽々しく言ってほしくない。
それからテレビのインタビュー
レポーターが産婦人科医に「出生前診断を何故するのか?」と聞いていた。「妊婦はお腹の子が障害があるかどうか不安なもの。だから健常の子であることを早い段階から証明して安心してその後の妊娠計画を送ってもらうため」
それから「もし、染色体異常の子であったら、妊娠中に出産後どう育てていくかゆっくりと考えることが出来る」と言っていた。
羊水検査で染色体異常がわかった妊婦の99%が中絶する現実・・・どう育てていくかではなく、妊娠を中断して胎児を殺す決断をする人が大半。なのにどうして医師はこんな発言をするのか。テレビの取材だから無難な答えをしているとしか思えない発言。逃げの発言としか思えない。
「この検査はダウン症だったら絶対に中絶するという固い決心がなければ受けてはいけません」と明確に言う医師もいる。こちらの方がずっと誠実・・・
だから、そして、そんな甘ったるい美しい言葉で片付けないでほしい。励ましたママもテレビの医師もその人の気持ちになっていない無責任発言と感しる。
私も全く同じ経験をした。
私は38歳で出産した。生まれてから知的障害のある自閉症と判明!
私が教育関係の仕事をしていることを知っているママ友からこう言われた
「やっぱ、子どもは親を選んで生まれてくるのね。立石さんを選んで△△君は生まれてきたのよ」と・・・
栄養士のママ友の子どもが食欲旺盛な子どもだった。
するとママ友は「□□君は料理上手のママを選んで生まれてきたのね」とも言っていた。
これと同じ感覚で私に言ったママ友・・・
そう、私は実際に特別支援学校の教員免許も持ち、長年、障害児教育にも携わってきた。だからと言って冷静でいられる訳がない。
「○○ちゃんはお喋りできるのに息子の声を一度も聞いたことがない」「皆、幼稚園入園前にはオムツがとれているのに、息子はあと半年で小学校入学なのにまだとれない」など他の子どもと比較して、周りを羨み妬む私・・・
“大家族スペシャル”という番組をよくやっている。子どもが10人くらいいる家庭
いつも不思議に思うことがある。子どもが大勢なので、良い意味でだいたいいい加減に育てている。家がゴミ屋敷・・・でも、子ども達はみんな逞しくて健康。埃だらけなのに喘息やアトピー子ども、障害児なんてその中にはいない。そんなテレビを見る度に「なんで、たった一人生んで、障害児なんだ」「くじ運が悪い」と正直思う。
「くじ運が悪い」とか書くとバッシングしてくる人が必ずいる。
「障害児の行く末を案じて無理心中」なんて事件が時々ある。そんな時「親のエゴだ!」とか「子どもには罪はないのにひどい親だ」と言う人がいるが、本当にその人の気持ちになっていない無責任な発言だと思う。だからバッシングしないで~!
無理心中・・・気持ちが凄くわかる。私も「自分が明日、死ぬとわかったら前日に子どもの首を絞めたい」と本音を人に言ったことがある。だって「この子を残して逝けないから・・・」
実行に移す人は少ないが障害を持っている親ならばこの気持ちは持った経験は必ずある筈。でも私がこの発言をしたことで「非人格者!よくも、それで幼児教育専門家なんて偉そうな顔していられるもんだ!」と相当な非難を受けた。でも、どう言われようが今もその気持ちは持っている・・・
私は妊娠19週目にトリプルマーカーテストを受けた。「胎児はダウン症の可能性大」と医師から言われた。そして、羊水検査に進んだ。結果が出る1ヶ月の間、私の母は「子どもだって生んでほしくない場合もある。子どももあなたも不幸になるのが目に見えてわかっているから産んでほしくない。もし、お腹にいる子どもが染色体異常だったら中絶しなさい」と言った。
19週というともう胎動も感じている妊婦の私。結果が出るのに30日間も待たなくてはならない。産む産まないで相当苦しんだ。21週目以降は人工妊娠中絶が認められていないから、検査結果が出て1週間のうちに中絶、妊娠継続を選択しなくてはならないという検査
もし「どんな子どもでも生む」のならばそもそもこの検査は受けないのに検査を受けた私。悩むこと自体が全く矛盾している行為・・・
結果は「白」。でも、生まれてから2年後自閉症と判明。
さて、息子が障害のある子どもであると判明した時、身内である父は私にこう言った。
「難儀な子どもを生んだ・・・」「一筋縄ではいかない子を産んだ・・・・」「墓守なのに・・・・」と。「中絶せよ」と言った母と同じ感覚
でも、これらは身内の愛情から出た言葉
表面的な付き合いのママ友達から出た無責任発言ではない。だから、両親からのこれらの言葉を真摯に受け止めた私・・・
私は世に出ている子育て本読むことが多い。歯が浮くような「ママ応援しているよ」「お子さんは宝、褒めて育てて」「愛情たっぷり育てられた子どもは・・・」が並べ立てられている文章が嫌い・・・何だか綺麗な言葉でオブラートで包んだ感じがする。なんとなく偽善的な感じ・・・
「子どもが育つ魔法の言葉」という大ベストセラーがあるが、読んでみて「こんな風に出来る訳がない」なんて思ってしまった。そして、上手に“魔法の言葉を言えない自分”を責める親が増えるんではないかと思ってしまった。
だからそういう文章をどうしても書けない。だから万人に受け入れられない私なのでありました。
「出生前検査」については何度も語っています。それについて書いたブログが次4つです。読んでくださいね~
カテゴリー:正直なつぶやき
バッシングなんてしませんヨ!
先生の素直なお気持ちを表現されているんですネ!!
私は健常児で産まれましたが、お袋に迷惑をかけてばかりでした!
今日の先生のブログは多くの母親に読んでいただきたいです。
(-人-)
立石先生こんにちは。「子供が育つ〜」の本、学校から配布される相談室の相談日リストに、担当者がこの本から毎月言葉を引用して使ってます。
正直、あなたには相談したくな〜いと毎月思ってます。先生の想像通り、「こんな言葉をいつでもかけられるなら、子育て苦労してないはっ」と自分を責めるというより、きれいごとを並べてる担当者にむかついてる私はひねくれものなのかな、、、先生のブログ、本音で書いてくれてるので、心のもやもやが晴れていきます。
魔法の言葉、そうそう簡単には出来ませんよね、状況とってもよくわかります。私も苦手な本です
障害児を育てています。
いま、子供に困難があり、健常で産んであげれなかった、こんな私が出産なんて、結婚なんて望んだからだ。
ごめん、こんな可愛いのに、たくさんの負い目ばっかり背負わせて、本当にごめんと、子供の前で泣いてしまいました。
子供の前で泣くなんて、子供を責めているのと同じ。どこまで行っても私はダメ母です。
正直、心中の想いが消えません。
でも、こちらの記事には救われました。
ありがとうございます。
泣くだけ泣いて、今夜は気持ちを吐き出して
明日からは現実をみれそうです。
ありがとうございました、
サクラママさん
お役に立てて良かったです。お子さんがきっと宝物になりますよ。お子さんにとってもママが宝物です。私がそうですから。これからも金曜日寄ってくださいね~
読ませていただきました。頭垂れるばかりです。
自分が当該の医者で、もし異常を見つけたなら・・「とても残念ですが・・今回は諦められる方が良いです」と”言い切り”ます。子供にも貴女にも何の罪もないからこそ。です。
どれ程言葉で飾っても”共に味わう地獄である”ことは厳然とした事実です。その地獄も昇華させる絶対的な自信があるなら別ですが・・。
難しい選択ですね。
コメントありがとうございました
拝読させていただきました。
現在66歳 奈良県生まれ男性です。
僕は高位型の鎖肛で生まれ人工肛門を造設して生後から17年間その生活でした。
僕が、そのような体で生まれてきたために姑、親戚から責められ苦しみ、僕を抱っこして汽車に飛び込もうと踏切に何回も立ったそうです。でも、僕の上に長男がいるため思いとどまったそうです。
僕はこのような体で生まれてきた、何か使命があると成長するにつれ考えられるようになりました。
今、この現在、僕の考えたように病気また僕と同じ同じ当事者で苦しんでいる人のために何かお役に立ちたいそれが実現しておかげさまでいろんな所で活動させていただいております。
清水様
そうなんですね。清水様のお母様の経験と清水様の生きてきた道がきっと誰かの役に立つと思います。
コメントをありがとうございました!
立石先生の素晴らしいお言葉有難うございます。
僕は数十年前にパソコンを初めて購入して鎖肛のことをインターネットで検索するとブログ、ホームページなどで鎖肛当事者のお母さんが投稿記事を書かれていました。
そこで、その記事に対して何か励みになればと考えコメントを書かせていただいていました。
その後から僕自身も世間に僕のすべてをカミングアウトしました。そしてその頃から自分自身の手記を書き始めていました。その手記の内容はは生後からの日常生活での出来事から17歳からの人工肛門閉鎖術(医師からは治すことは出来ない、すなわち手術しても無駄なだけ)と宣告されながらの闘病生活が5年間、それから健常な体になり一般の会社に就職して年月が経ち、平成22年から奈良県に障害者に対しての偏見差別をなくす禁止条例をつくりたいと少年の時からの夢をもっていました。その事業所には障害者を支援する事業所で人権擁護の備わっている事業所だったので僕自身が辛い、悔しい思いをしてきたので絶対、奈良県からも、「この条例をつくってやるぞ!」の強い思いで活動してきました。
その条例が平成28年4月1日から施行されました。それと同じ日に国の法律で「障害者差別解消法」も施行されました。その施行のニュースが新聞で僕の事例が全国版で掲載されました。
まだ、手記は出版していませんが実現できるかはわかりませんが将来は本にして皆様方にお読みいただき少しでも励みになってお役に立ちたいと考えています。
カミングアウトし、発信することで多くの方が救われると思います。清水様、応援しております!